夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


笑いの効用

2012年08月28日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 “マンガでわかる神経伝達物質の働き”野口哲典著(ソフトバンク クリエイティブ サイエンス・アイ新書)を読んでいたら、笑いの効用について次のように書いてあった。

(引用開始)

 笑いはヒトだけに見られる感情表現である。そして、たんに笑いといってもさまざまなものがある。
 通常は楽しいとき、うれしいとき、おもしろいときなど快感情のときに笑うが、ときには愛想笑いのように、そうでない場合にも笑うことがある。
 一般的な快感情の笑いは、好き・嫌いや快・不快の判断をしている扁桃体や視床下部の働きによるものと考えられる。
 おもしろいといった快情報が入ってくると、扁桃体で快感情が生まれ、その信号が前頭連合野に伝わり、笑うべきかどうかの最終判断をしている。
 笑ってもよいと判断すれば、脳の奥にある大脳基底核へ信号が伝わり、顔面神経を刺激して笑いの表情をつくるのである。
 愛想笑いなどは、扁桃体から快感情の信号がなくても、前頭連合野が強制的に笑いの表情をつくっているのだ。
 笑いの感情は、副交感神経の活動を活発にするため、緊張をやわらげる効果がある。同時に脳内でβエンドルフィンやドーパミンを放出させ、多幸福感を生み出すのだ。
 特にβエンドルフィンは脳内麻薬とも呼ばれているように、痛みやストレスをやわらげ、免疫力を強化する作用がある。
 こんなことから、笑いは健康のためにもよいといわれるようになったのだ。さらに特別おもしろくなくても、意識的に笑いの表情をつくったり、声をだしてわらうだけでも、こうした効果を得られることが明らかになってきた。
 心身の健康のためにも、おおいに笑うことが重要なのだ。

(引用終了)
<同書 168ページ>

呼吸について」の項で、呼気の効用について書いたけれど、笑いにも副交感神経の活動を活発にする効果があるという。疲れたときなど特に、寅さんの映画でも観ながら大いに笑いたいものだ。

 「五欲について」の項で、ヒトだけに特有なものとして名声欲と財欲について述べたが、笑いもヒトだけのものだという。チンパンジーも笑いに似た声をあげるという話をどこかで読んだ記憶があるが、笑いはきっと共同体形成の進化に伴う感情表現の一つなのだろう。そういえば、経済人類学者の栗本眞一郎氏に“パンツをはいたサル”という著書があった。

 タイのことを「微笑みの国」というけれど、もしかしたらかの国民は地球上で最も進化した人々なのかもしれない。笑いは快感情・幸福感に通じる。だから、ブータンのGNH(Gross National Happiness)という考え方は、人類の次なる進化の目標を示しているのではないだろうか。尚、神経伝達物質の働きについては、以前「仕事の達人」の項でも触れたことがある。併せてお読みいただければ嬉しい。

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posted by 茂木賛 at 08:09 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

音響空間

2012年08月20日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 先日「密息と倍音」の項で、

(引用開始)

日本列島に音響幅の広い母音言語が育ったのは、倍音(特に非整数次倍音)を多く含む自然・住居環境があったことが寄与していると思われる。西欧では、音がよく反射し、高い方の倍音が吸収されやすい自然・住居環境があったため、子音言語と基音を主体にした音楽が発展した。

(引用終了)

と書いたけれど、日本と西欧の「音響空間」の違いについて、中村明一氏の“倍音”(春秋社)からさらに引用しておきたい。

(引用開始)

 まず、国土の問題として、日本は非常に湿気を多く含んだ自然環境にあります。柔らかい土、草木、落ち葉に覆われ、日本中が響かない空間になっていたのです。音が響かないと、相対的に、高い音、倍音が聞こえてくるようになります。ですから、私たち日本人は、常にそれらの倍音が存在するところに生息していたことになります。
 次に、私たちの住環境を見てみましょう。日本人が伝統的に住んでいた家は、藺草(いぐさ)で編んだ畳、紙の障子や布の襖(ふすま)といった、いわば吸音材に囲まれたようなものでした。外の自然環境がそのまま、家の中に形成されていたといってもよいでしょう。こうして一層、高い音、倍音に敏感になっていったのです。
 これと対比して、西欧の場合を見てみると、家は石や煉瓦でできており、道路も石畳で造られていました。石に覆われているということは、非常に音が響く空間だということです。その音が響く空間で、西欧人は生活していました。
 先に述べた通り、響く空間においては、音が反射します。すると反射のたびに高い方の倍音が吸収されてしまい、それらを聞くことが難しくなります。低い倍音は、並行面により定常波となり増幅されます。それゆえ、西洋においては日本と反対に、基音を主体にした音楽が発展することになるわけです。

(引用終了)
<同書 78−79ページ>

響かない空間だと高い音、倍音がよく聞こえ、響く空間だと、基音がよく聞こえる。それが言語や音楽の違いに寄与しているわけだ。言語については、音響空間の他、歴史や文字の違いなども勿論併せて考えなければならない。それらについては「民族移動と言語との関係」、「音声言語と書字言語」、「二重言語としての日本語」などの項を参照して欲しい。

 さて、中村氏は同書のなかで、「ハイパーソニック・エフェクト」という興味深い研究について紹介している。それによると、可聴域の部分とそれを越える可聴域外の高周波成分が共に鳴っている場合、その高周波成分は、皮膚から脳に伝達されるらしい。皮膚から脳に伝達された高周波は、α波の増加やNK細胞の増加などを促進し、リラックス効果や健康を促進するという。

 皮膚の能力については、このブログでもこれまで「皮膚感覚」や「境界としての皮膚」、「1/f のゆらぎ」の項などで述べてきた。その中で紹介した“皮膚という「脳」”山口創著(東京書籍)という本にも、この「ハイパーソニック・エフェクト」のことが載っている。人(の一生)も“モノ”ではなく“コト”であるから、「“モノからコトへ”のパラダイム・シフト」(略してモノコト・シフト)の時代、人という“コト”の境界面に張り巡らされた「皮膚」について、これからもさらに勉強を続けたい。

 中村氏はまた、コミュニケーションの種類には一方向型、双方向型、同期(シンクロ)型、自己回帰型があり、音楽によるコミュニケーションは、伝わる情報量が多い「同期型」であるという。同期とは、以前「相転位と同期現象」の項でも書いたように、二つのリズムが相互作用して周期が一致し乱れがない状態を指す。中村氏は演奏家と聴衆との関係について、

(引用開始)

 これまでは、演奏家→聴衆という一方的な関係が主に語られてきましたが、同期型コミュニケーションという観点から振り返ると、実は、演奏家と聴衆というのは、同じ音の場に同期しながら存在しているのです。したがって、この両者の関係、聴衆の重要性を、捉えなおす必要があるのではないでしょうか。

(引用終了)
<同書 187ページ>

と書いておられる。モノコト・シフトの時代、音楽を含む「同期型コミュニケーションの場」が増えることは間違いないだろう。

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posted by 茂木賛 at 15:25 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

真夏のアリーナ

2012年08月14日 [ プレイリスト ]@sanmotegiをフォローする

 2008年の夏行なわれたサザンオールスターズ(サザン)の解散コンサートについては、彼らが歌った全46曲から、これまで各12曲ずつ選んで「雨のアリーナ」、「想い出のアリーナ」、「懐かしのアリーナ」と題したプレイリストにしてきた。今回、残った10曲と、去年の大晦日から今年の正月にかけて開かれた桑田佳祐(クワタ)のコンサートで、クワタが原由子と一緒に歌った1曲(「シャ・ラ・ラ」)とを併せ、全11曲のプレイリストを作ってみた。タイトルは「真夏のアリーナ」。これで全46曲(プラス1曲)が網羅された。


<A面>
「夏をあきらめて」
「Oh! クラウディア」
「東京シャッフル」
「あっという間の夢のTONIGHT」
「メリケン情緒は涙のカラー」
「顔」

<B面>
「Bye Bye My Love(U are the one)」
「Melody(メロディ)」
「爆笑アイランド」
「TSUNAMI」
「シャ・ラ・ラ」

曲構成は歌われた順ということで特に工夫はない。iPodに入れてジョギングのときなどに四年前のコンサートを想い出しながら聴いていただければ嬉しい。

 四年前のコンサートから、今日までいろいろのことがあった。コンサートから一年後の夏「政権交代」があったが、民主党の政権は結局上手くいかなかった。コンサートから三年後の去年、東日本大震災と福島原発事故が起こった。サザンを解散したクワタはその後体調を崩したが嬉しいことに無事復活し、去年アルバム「MUSICMAN」を出し、九月に仙台で“宮城ライブ〜明日へのマーチ!!〜”を開いた。そして今年アルバム「I LOVE YOU - now & forever -」が出た。このアルバムには「クワタの傑作」の項で紹介した“声に出して歌いたい日本文学<Medley>”も入っているので是非聴いてみて欲しい。

 参考までに、「真夏のアリーナ」それぞれの曲を含むアルバムやシングルと、それが発表された年を載せておこう。

<A面>
1982年(アルバム「NUDE MAN」)
1982年(アルバム「NUDE MAN」)
1983年(シングル「東京シャッフル」)
1984年(アルバム「人気者で行こう」)
1984年(アルバム「人気者で行こう」)
1985年(アルバム「KAMAKURA」)

<B面>
1985年(アルバム「KAMAKURA」)
1985年(アルバム「KAMAKURA」)
1998年(アルバム「さくら」)
2000年(シングル「TSUNAMI」)
1980年(シングル「シャ・ラ・ラ/ごめんねチャーリー」)

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posted by 茂木賛 at 12:23 | Permalink | Comment(0) | プレイリスト

密息と倍音

2012年08月09日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 先日「呼吸について」の項で、胸式呼吸や腹式呼吸について言及したが、“「密息」で身体が変わる”中村明一著(新潮選書)によると、呼吸法にはこの二つのほかに「密息」という日本古来のやり方があるという。「密息」は、

(引用開始)

 ごく簡単にいえば、腰を落とし(骨盤を後ろに倒し)た姿勢をとり、腹は吸うときも吐くときもやや張り出したまま保ち、どこにも力を入れず、身体を動かすことなく行なう、深い呼吸です。外側の筋肉でなく、深層筋を用い、横隔膜だけを上下することによって行なうこの呼吸法では、一度の呼気量・吸気量が非常に大きくなり、身体は安定性と静かさを保つことができ、精神面では集中力が高まり、同時に自由な開放感を感じます。

(引用終了)
<同書 13ページ>

ということで、身体の安定性を重んじる武術や禅、茶の湯などの日本文化の原点にはこの呼吸法があるという。

 以前「リズムと間」の項で、

(引用開始)

 カナ一文字が最小の音声認識単位であるところの日本語の歌は、「拍」と「間」によって構成される。それに対して、シラブル(子音から子音への一渡り)が最小の音声認識単位であるところの英語の歌は、シラブルを繋ぐものとしての「ビート(脈動)」や「リズム(律動)」によって構成されるということがわかる。(中略)西洋の音楽は、粒子の連続だから「ビート(脈動)」や「リズム(律動)」が重要であり、日本の音楽は、一本の線だから「拍」や「間」による抑揚が大切なのであろう。

(引用終了)

と書いたけれど、日本文化にとって大切な「間」の感覚は、身体に安定性と静かさを齎す「密息」という呼吸法によって、さらに研ぎ澄まされてきたようだ。

 著者の中村明一氏は、日本の伝統楽器である尺八の演奏者である。氏によると、尺八の音楽には、「倍音(特に非整数次倍音)」が多く含まれているという。「倍音」とは何か。中村氏のもう一つの著書“倍音”(春秋社)から引用しよう。

(引用開始)

 音に含まれる成分の中で、周波数の最も小さいものを基音(きおん)、その他のものを「倍音」と、一般的に呼び、楽器などの音の高さを言う場合には、基音の周波数をもって、その音の高さとして表します。(中略)
 倍音の種類は、大きく二つの分けることができます。
 ひとつが、「整数次(せいすうじ)倍音」と呼ばれるものです。基音の振動数に対して整数倍の関係にあります。(中略)
 もうひとつが、「非整数次(ひせいすうじ)倍音」と呼ばれるものです。弦がどこかに触れてビリビリとした音を発することがあります。このように整数倍以外の何かしら不規則な振動により生起する倍音が「非整数次倍音」です。

(引用終了)
<同書 9−12ページ>

ということで、自然界が発する有機的な音には、非整数次倍音が多く混ざっている。

 以前「母音言語と自他認識」の項などで、日本人は母音を左脳で聴くと述べたけれど、中村氏によると、日本人は尺八などの伝統音楽も左脳で聴いているという。

(引用開始)

 音楽、言語、自然の音響について見てみると、西欧人の場合は、言語は左脳、音楽、自然の音響は、右脳。日本人の場合は、言語、音楽(日本の伝統音楽)、自然の音響はすべて左脳でとらえられています。日本人の言語、音楽、音響を結びつけているのは、「非整数次倍音」です。前章でも述べたように、日本の伝統音楽は「非整数次倍音」が出るように改造されている、つまり、より言語に近く、自然の音に近い音響が出るように工夫されています。

(引用終了)
<同書 31ページ>

日本列島に音響幅の広い母音言語が育ったのは、倍音(特に非整数次倍音)を多く含む自然・住居環境があったことが寄与していると思われる。西欧では、音がよく反射し、高い方の倍音が吸収されやすい自然・住居環境があったため、子音言語と基音を主体にした音楽が発展した。

 中村氏は、世界の音楽を基音・倍音構造によって調べ、今後の音楽の方向性について次のように述べる。

(引用開始)

 私たちは、いま、歴史的に大きな転換点に立っています。基音による音組織をもとに大きく発展してきた西洋音楽の発展は終焉を迎え、世界は倍音に重きを置いた音楽にシフトチェンジして行くでしょう。
 言語、音楽、それぞれ個別に発展し、飽和点に達した文化は、境界を越えて、大きな発展を迎えるスタートラインに立ったところです。

(引用終了)
<同書 242ページ>

 倍音豊かな音楽は、録音されたCDなどではなかなか再現することが難しい。以前「“モノからコトへ”のパラダイム・シフト」の項で「ミュージッキング」というコンセプトを紹介し、これからの“モノからコトへ”のパラダイム・シフト(略してモノコト・シフト)の時代においては、音楽もモノ(一方的な鑑賞の対象物)から、コト(あらゆる関係性に開かれたパーフォーマンス)へとその中心が移ってゆくだろうと書いたけれど、基音から倍音に重きを置いた音楽へのシフトチェンジも、モノコト・シフト時代の到来を示しているように思える。

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posted by 茂木賛 at 10:53 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

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