夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


都市計画の不在

2012年05月29日 [ 街づくり ]@sanmotegiをフォローする

 “対談集 つなぐ建築”隈研吾著(岩波書店)を面白く読んだ。なかでも(隈氏と)都市プランナーの蓑原敬氏との対談「都市計画の勝負(上下)」は、近代日本の「都市計画の不在」理由(の一端)を、関連する法律制定経緯を辿るかたちで詳らかにしてくれるので興味深かった。

 日本の都市計画に関する法律は、主に都市計画法と建築基準法という二つあるわけだが、対談によると、これらは1919年(大正8年)に出来た古い法律(旧都市計画法と市街地建築物法)に、戦後、市場原理主義(儲け主義)と20世紀流工業社会型行政指導(調整ルール)とが足されただけのものだという。詳しくは同書をお読みいただきたいが、お二人によると、かかる法律の不備によって、日本の都市には、都市の文脈の中で建築物をどうつくるかという、本来あるべき長期的な視点に立ったResource Planningがまったく不在だという。

 先日「精神的自立の重要性」の項で、

(引用開始)

 日本社会においては、「大脳新皮質主体の思考」が優位に立つ場合でも、自分と相手とを区別する「自他分離機能」が充分働かないようだ。その為だろうか、「環境中心」の「日本語的発想」が政治やビジネスの世界にも侵食し、せっかく良いチャンスだった高度成長時代、社会に「英語的発想」=「公(public)」の概念が充分定着しなかった。

 そして、本来公平であらねばならない「公(public)」の領域(政治やビジネスの世界)においても、個人の精神的自立が充分果たされぬまま、もたれあいや妬みあい、私有意識や非公開主義などが高度に構造化してしまった。今後も社会に「英語的発想」=「公(public)」の概念が根付かないままだと、それは是正されないことになる。

(引用終了)

と指摘したけれど、政治やビジネスにおける「凭れ合いの構造化」は、都市計画という公(public)の領域においても、夙(つと)に実証されているわけだ。

 この対談に触発されて、“都市計画法改正―「土地総有」の提言”五十嵐敬喜・野口和雄・萩原淳司共著(第一法規)という本も読んでみた。ここにある土地総有という「コモンズ(Commons)的発想」は、「“モノからコトへ”のパラダイム・シフト」(略してモノコト・シフト)時代において、とても興味深い提案である。

 対談では、都市計画における稀な成功例として、「銀座の街づくり」が挙げられている。銀座では、街の担い手の結束力がとても強く、銀座の人たちを窓口とする「デザイン協議会」があり、敷地単位の利害よりも街の景観や利害を優先する、成熟した合意形成が成されるという。コモンズ的発想と云えるだろう。なるほど、この街は今も洗練された味わいを保っている。このブログでもたびたび銀座を取り上げてきた(「銀座のハチミツ」「銀座から日比谷へ」「長野から銀座へ」)。これからも、銀座には大人の街として栄え続けて欲しいと思う。

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posted by 茂木賛 at 09:36 | Permalink | Comment(0) | 街づくり

水の力

2012年05月22日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 昨日皆さんのところでは、金環日蝕を観察することが出来ただろうか。私は屋上で専用眼鏡を使って、見事なオレンジのリングを見ることができた。先日のスーパームーン、昨年12月の皆既月蝕も良かったが、今回のリングは事の外素晴らしかった。長く記憶に残りそうだ。

 さて、最近「水」に関する本を、三冊続けて読んだ。一冊目は“水を守りに、森へ”山田健著(筑摩選書)で、この本については先日「多様性を守る自由意志」の項で紹介した。二冊目と三冊目は、“水の健康学”藤田紘一郎著(新潮選書)と“水とはなにか <新装版>”上平恒著(講談社ブルーバックス)である。良い機会なので、ここで「水」についての私の興味を纏めておきたい。

1. 水と健康とのかかわり

 水は人の健康に欠かせない。私の水に対する興味の第一は、水と健康とのかかわりである。“水の健康学”藤田紘一郎著には、水の持つ身体への影響、とくに飲料水におけるPH値や、ミネラルの含有量(硬度)、酸化還元電位などについてやさしく解説してあるので参考になる。

2. 水の非線形的な性質

 水は熱しやすくさめにくく、また凍りにくい。水は物質を溶かしやすく、クラスターを形成しやすい。“水とはなにか <新装版>”上平恒著によると、これらの性質の背景には、水が「水素結合」と「双極子能力」という二つの力を併せ持ち、他の同属元素に比べて分子間結合力が高いことが挙げられるという。以前「脳について」の項で、

(引用開始)

「脳のなかの水分子」(紀伊国屋書店)の著者中田力氏によると、脳にはニューロン・ネットワークの他にもう一つ高電子密度層があり、その仕組みが人の「内因性の賦活(自由意志や創造力、ひらめき)」を支えているという。

(引用終了)

と書いたことがあるけれど、この高電子密度層(とその下の間隙)は「水を神経伝達物質とするシナプス」だから、ここでも水が大きな役割を果たすと考えられている。水の非線形的な性質が、私の興味の第二である。尚、脳の高電子密度層と水分子との関わりを論じた中田氏の「渦理論」については、同氏の“脳の方程式+α ぷらす・あるふぁ”(紀伊国屋書店)により詳しい。

3.流域思想

 このブログでは、流域思想に基づいた街づくりを提唱しているが、流域の形成には勿論「水」の存在が欠かせない。先日「多様性を守る自由意志」の項で紹介した“水を守りに、森へ”山田健著(筑摩選書)は、その水を守ろうとする実践の書である。「流域思想」、あるいは水と社会との関わりが、私の水に対する興味の第三である。また、流域の歴史を勉強する上で、各地に残る水信仰も興味深い。

 水は人の健康を守り、意思を育て、流域と街をつくる大切な存在である。これからも「水の力」について様々な視点から勉強してゆきたいと思う。

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posted by 茂木賛 at 09:31 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

小説“僕のH2O”について

2012年05月13日 [ アート&レジャー ]@sanmotegiをフォローする

 先日、以前より販売していた電子書籍小説“僕のH2O”と、電子書籍コンテンツ・サイト「茂木賛の世界」で連載完結した“僕のH2O ブログ編”を一冊に纏め、電子書籍販売サイト「パブー」から新規に出版した。値段は以前と同じ315円。表紙イラストはイラストレーターのタナハシヒロ氏にお願いした。このページ右にある“僕のH2O”と題された本のタイトル(又は表紙)をクリックいただくと、パブーのサイトに遷移するので、興味のある方はお読みいただければと思う。

 ちょうど良い機会なので、本の紹介方々、この小説ができた背景などについて書いてみたい。“僕のH2O”はストーリー小説、“僕のH2O ブログ編”は対談小説の形をとっているが、どちらもこの「夜間飛行」のブログで綴ってきた「生産と消費論」をベースとしている。「生産と消費論」の要旨は、

1. 人は社会の中で生産(他人のための行為)と消費(自分のための行為)を繰り返していく。人は自分のために生まれるのではなく、社会のために生まれてくる。

2. ある人の生産は他のある人の消費であり二つは等価である。生産は主に理性(交感神経)的活動であり消費は主に感性(副交感神経)的活動である。

というものだ(詳しくはカテゴリ「生産と消費論」の記事を順にお読みいただきたい)。

 人生そのものが他人の為などというと、宗教かボランティア活動と誤解されかねないが、この考え方は、自分の為のことをしてはいけないのではなく、「それが回りまわって人の為になる」というところに力点を置いている。贅沢をしてはいけないのではなく、それをばねに人が(仕事などに)より力を発揮するところに注目している。経済人類学、構造主義生物学、重力進化学、アフォーダンス理論などによって、人の利他的行為の源泉や贈与の意味を探ろうとしている。これまで、人の生産活動と消費活動とをこのように定義し、論理展開した考え方は(私の知る限り)ないと思う。そのせいもあって、この論旨はなかなか理解して貰いにくい。“僕のH2O”は、この考え方を、ストーリーと対談の形で出来るだけ具体的に表現しようとしたものである。

 以下、パブーのサイトに載せた小説紹介文を引用しておこう。

(引用開始)

 僕らは朝起きてから夜寝るまで毎日「名前のついていること」ばかりしている。この世界の「まだ名前のついていないこと」というものはほとんど存在していないに等しい。大学生勉はそんなことを考えて、あるとき自らその「まだ名前のついていないこと」を始める。「僕は毎日大学に通うことに退屈している。君のようになにか目的を持って勉強することが出来たら良いと思うけれど、今の僕にはそれが見つからないんだ」ニースにいる恋人の洋子に、勉が語るその「まだ名前がついていないこと」とは?

(引用終了)

ここでいう「まだ名前のついていないこと」が、生産(人のための行為)と消費(自分のための行為)を区別していくことなのである。“ブログ編”のプロローグの一部も引用ておきたい。

(引用開始)

 これは、僕が手がけている「僕のH2O」というネット上のコミュニティー・サイトで、新しく会員になってくれたAさんと行なった対談の記録である。
 「僕のH2O」というサイトは、会員が「人のために成した行為」と「自分のために成した行為」とを日記風に書き込んで、それに点数をつけたり、コメントを寄せ合ったりするコミュニティーなのだが、最近会員が増えてきたので、コンセプトをより深く理解してもらおうと、この対談を企画した。

 「僕のH2O」のことは知っているけれど、いまひとつコンセプトが腑に落ちない、という方はこれを読んで欲しい。きっと活動の真意が分かっていただけると思う。僕にとっても、年長者で人生経験の豊富なAさんとの対話は、自分の考えを整理するのにとても役に立った。

(引用終了)

ということで、ここでは、人と社会とのかかわり(行為の波動性、利他的行為と神経経済学、自己とは何か、貨幣の意味、時間とは何か、理性と感性、行為の三態、言葉の偏り等々)について、「生産と消費論」の観点から総合的に分かりやすく解説を試みている。人が自由であるべき根拠や行動の契機も、生産と消費活動のダイナミズムに内在されていることを論証しようとしている。本編のストーリーを読んだあと、この対談を読んでいただくと理解がより深まるものと思う。

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posted by 茂木賛 at 15:59 | Permalink | Comment(0) | アート&レジャー

精神的自立の重要性

2012年05月08日 [ 公と私論 ]@sanmotegiをフォローする

 前回「自分でよく考えるということ」の項で、

A Resource Planning−英語的発想−主格中心
a 脳の働き―「公(public)」
Α 男性性=「空間重視」「所有原理」

B Process Technology−日本語的発想−環境中心
b 身体の働き―「私(private)」
Β 女性性=「時間重視」「関係原理」

という対比を見、偏ることなく物事を考えるには、AとB両方のバランスが大切であると述べた。

 このバランスを個人から社会全体に拡大して見ると、大量生産・消費社会は「所有原理」が支配的だから、公私に亘って「大脳新皮質主体の思考」(脳の働き)が優位に立つ社会だと思われる。戦後日本の高度成長期は、確かに、経済的・空間的拡張に価値を置いた“モノ”中心の思考が横溢した時代だった。それに対して、「“モノからコトへ”のパラダイム・シフト」(略してモノコト・シフト)を迎えた今の社会は、「関係原理」に基づく「脳幹・大脳旧皮質主体の思考」(身体の働き)が優位に立つ時代といえるだろう。

 しかし一方、前項で、


(引用開始)

 ただし同じ「大脳新皮質主体の思考」でも、(「母音言語と自他認識」の項で述べたように)日本語においては、自分と相手とを区別する「自他分離機能」が充分に働かないという仮説がある。

(引用終了)

と書いたように、日本社会においては、「大脳新皮質主体の思考」が優位に立つ場合でも、自分と相手とを区別する「自他分離機能」が充分働かないようだ。その為だろうか、「環境中心」の「日本語的発想」が政治やビジネスの世界にも侵食し、せっかく良いチャンスだった高度成長時代、社会に「英語的発想」=「公(public)」の概念が充分定着しなかった。

 そして、本来公平であらねばならない「公(public)」の領域(政治やビジネスの世界)においても、個人の精神的自立が充分果たされぬまま、もたれあいや妬みあい、私有意識や非公開主義などが高度に構造化してしまった。今後も社会に「英語的発想」=「公(public)」の概念が根付かないままだと、それは是正されないことになる。

 さらにモノコト・シフトの時代は、社会全体として「脳幹・大脳旧皮質主体の思考」が優位に立つ時代である。従って、今のうちに「公(public)」の領域に「主格中心」=「英語的発想」をしっかり根付かせておかないと、社会全体がますます「私(private)」に偏っていってしまう危険性があると思う。

 昨今の日本の政治やビジネスの世界を見るに、この傾向(もたれあいや非公開主義の高度な構造化)がさらに強まっているような気がするが、みなさんはどのようにお感じになっておられるだろう。「“シェア”という考え方」及び「“シェア”という考え方 II」の項で、本来「大脳新皮質主体の思考」が持つべき「精神的自立」の必要性をことさら強調したのは、そういう理由からなのである。

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posted by 茂木賛 at 10:34 | Permalink | Comment(0) | 公と私論

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