夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


“シェア”という考え方 II 

2011年12月27日 [ 公と私論 ]@sanmotegiをフォローする

 前回に続いて“シェア”について考えてみたい。前回見たように、日本語の特質であるところの「環境依存性」は、日本人に「世間」という人間関係の強い縛りを強いてきた。以前「男性性と女性性 II」の項で、

(引用開始)

男性の「所有原理」と「空間重視」、女性の「関係原理」と「時間(リアルタイム)重視」は、男性性と女性性それぞれの欲望形式と認識形式とを言い表したキーワードなのだろう。

(引用終了)

と述べ、社会にとって大切なのは、男性性と女性性とのバランスであると書いたことがあるが、「世間」という人間関係の縛りは、社会に女性性の「関係原理」の方が過剰に働く結果だと思われる。

 一方、この国の支配者たちは、人々の間に「世間」という縛りがあるのを良いことにして、昔の律令制からいまの官僚制に至るまで、男性性特有の「所有原理」をもって上から人々を押さえつけてきた。それは、

私有    → 共同利用
独占、格差 → 分配
ただ乗り  → 分担
孤独    → 共感

にある左側の古いパラダイムと重なる。

 以上の二点をまとめると、日本はこれまで、社会や人々は「世間」という関係原理、政治やビジネスは「律令」という所有原理によって形作られてきた訳だ。

 地球規模でエネルギー循環が求められるようになり、日本が安定成長時代に入った今、われわれの社会は必然的に変わらざるを得ない。どう変わらなければならないかというと、人々は「世間」に縛られすぎることなく「所有原理」を自覚して精神的に自立すること、政治やビジネスは、女性性に基づく「関係原理」を大胆に取り入れること、この二つである。

 以前これと似たことを「複眼でものを見る必要性」の項で、小沢一郎氏の「民主党代表選挙投票前決意表明文」(2010年9月)の一部を引用しながら考察したことがある。ここで、小沢氏の表明文の一部をもう一度引用しよう。

(引用開始)

 私には夢があります。役所が企画した、まるで金太郎あめのような町ではなく、地域の特色にあった町作りの中で、お年寄りも小さな子供たちも近所の人も、お互いがきずなで結ばれて助け合う社会。青空や広い海、野山に囲まれた田園と大勢の人たちが集う都市が調和を保ち、どこでも一家だんらんの姿が見られる日本。その一方で個人個人が自らの意思を持ち、諸外国とも堂々と渡り合う自立した国家日本。そのような日本に作り直したいというのが、私の夢であります。

(引用終了)
<9/14/2010 MSN産経ニュースより>

個人の精神的自立と、お互いがきずなで結ばれて助け合う社会。ここには所有原理と関係原理、男性性と女性性との両立の重要性が見事に表明されていると思う。最後に、三浦氏が指摘した、

私有    → 共同利用
独占、格差 → 分配
ただ乗り  → 分担
孤独    → 共感

といったパラダイム項目に、

世間    → 社会
もたれあい → 自立
所有    → 関係
モノ    → コト

という私なりの項目を四つ付け加えておきたい。

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posted by 茂木賛 at 09:53 | Permalink | Comment(0) | 公と私論

“シェア”という考え方

2011年12月20日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 “これからの日本のために「シェア」の話をしよう”三浦展著(NHK出版)という本を内容に共感しながら読んだ。著者の三浦氏は、消費社会研究家、マーケティング・アナリストで、以前「街の魅力」や「新書読書法(2010)」などでも本を紹介したことがある。まず同書のカバー裏の紹介文を引用しよう。

(引用開始)

 いま、消費や経済自体がシェア型になり始めている。かつそれが消費や経済を縮小させるのではなく、むしろ新たな方向に拡大する力を持ち始めている。
 本書は、これからの日本社会にとって有効なシェア型の価値観や行動、そしてすでに拡大し始めたシェア型の消費やビジネスの最新事情についてのレポートである。

(引用終了)

 三浦氏はこの本で、なぜ今の日本にシェア型の価値観や行動が必要なのかということについて、超高齢社会、コミュニケーション・共感の重視、エコ意識の拡大、情報化などから分析し、すでの始まっているシェア型の消費とビジネスについて、物のシェア、人のシェアの両面から具体的な例を挙げて丁寧に説明している。そしてシェアのコンセプトを、分配、分担、共感という三つのキーワードに込め、シェアの意味を、

私有     → 共同利用
独占、格差 → 分配
ただ乗り   → 分担
孤独     → 共感

といった「パラダイム・シフト」として示している。詳しくは同書を読んでいただきたいが、三浦氏がご自分でも、

(引用開始)

 また本書は、私が郊外、団地、ニュータウン、都市、住宅、建築、家族、若者、私有、コミュニティなどについて過去ずっと考えてきたことが、渾然一体となっている。その意味では個人的にいささか感慨深いものがある。

(引用終了)
<同書 232ページ>

と書いておられるように、“シェア”は、安定成長社会の様々な事象の底に流れる根幹的な価値観と云えるだろう。

 このブログでは、安定成長時代の産業システムとして、多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術の四つを挙げ、それを牽引するのは、フレキシブルで判断が早く、地域に密着したスモールビジネスであると述べてきているが、分配、分担、共感をベースとする“シェア”は、多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環といった産業システムの中心コンセプトであり、スモールビジネスの成立に欠かせない社会的価値観でもあると思う。

 さて、“シェア”の時代にとって大切だと思われるテーマをいくつか挙げてみたい。

1. モノからコトへ

 シェアという「コト」の分析には、アフォーダンスや言語、エッジ・エフェクトや境界設計といった「関係性」の人間科学、免疫学(生物学)や気象学、流体力学や波動力学、熱力学といった「コトの力学」の応用が必要だと思われる。

2. 生産と消費の相互性

 このブログでは、他人のための行為を「生産」、自分のための行為を「消費」と呼び、ある人の「生産」は別の人の「消費」であり、ある人の「消費」は別の人の「生産」であると論じてきた。“シェア”型経済においては、これまでの大量生産/在庫販売システムから、少量生産/対面販売システムへと、その経済活動の中心がシフトしていくと考えられる。そしてこの少量生産/対面販売システムは、ある人の「生産」が別の人の「消費」であり、ある人の「消費」が別の人の「生産」であるという、「生産と消費の相互性」原理をより顕在化させるだろう。生産と消費の相互性について、「生産と消費について」の項から引用しておこう。

(引用開始)

 「生産」(他人のための行為)と「消費」(自分のための行為)には、必ず相手が存在する。一対多である場合もあれば一対一ということもあるだろうし、「生産」がサービスではなく物(商品)の場合は在庫期間もあるだろうが、他人のための行為にはかならず受け手が想定されるし、自分のための行為にはかならずそれを与えてくれる人が居る。自然を満喫しようと思って山歩きをしたとしても、どこかに誰か、山道を整備してくれた人が居るはずなのだ。三つ星レストランのシェフが腕によりをかけて料理を作ろうとすれば、すばらしい素材を提供する多くの農家や酪農家が必要となる。オペラ歌手にはその技量を味わう観客が必要なのだ。

(引用終了)

このブログのカテゴリ「街づくり」の各項で取り上げてきたテーマは、みなそのような“シェア”型経済に根ざした活動(の諸相)である。

3. 精神的自立の必要性

 “シェア”は、

私有     → 共同利用
独占、格差 → 分配
ただ乗り   → 分担
孤独     → 共感

ということであるから、その前提として、個人の精神的自立が必要である。そうでないとメンバーの間にもたれ合いや依存状態が生じ、“シェア”のコンセプトそのものが成り立たなくなる。日本人(日本語)の環境依存性については、カテゴリ「言葉について」の各項でも論じてきたが、元一橋大学学長の阿部謹也氏は、その著書“「世間」とはなにか”(講談社現代新書)のなかで、日本人の環境(人間関係)依存性について、

(引用開始)

 日本の個人は、世間向きの顔や発言と自分の内面の想いを区別してふるまい、そのような関係の中で個人の外面と内面の双方が形成されているのである。いわば個人は、世間との関係の中で生まれているのである。世間は人間関係の世界である限りでかなり曖昧(あいまい)なものであり、その曖昧なものとの関係の中で自己を形成せざるをえない日本の個人は、欧米人からみると、曖昧な存在としてみえるのである。ここに絶対的な神との関係の中で自己を形成することからはじまったヨーロッパの個人との違いがある。わが国には人権という言葉はあるが、その実は言葉だけであって、個々人の真の意味の人権が守られているとは到底いえない状況である。こうした状況も世間という枠の中で許容されてきたのである。

(引用終了)
<同書 30ページ>

と述べておられる。精神的自立の必要性については、カテゴリ「公と私論」の各項でも論じてきた。参照いただければと思う。

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posted by 茂木賛 at 09:55 | Permalink | Comment(0) | 起業論

鉄と海と山の話

2011年12月12日 [ 街づくり ]@sanmotegiをフォローする

 “鉄は魔法つかい”畠山重篤著(小学館)という素晴らしい本を読んだ。まずは新聞の書評を紹介しよう。

(引用開始)

 古来、漁師の間には、豊かな漁場と近接した森を示す「魚付林(うおつきりん)」という言葉があった。沈めた錨(いかり)の周りに魚が集まることも知られていた。だが、カギを握るのが「鉄」と分ったのは最近のこと。森から運ばれた土の中の鉄分が植物性プランクトンをはぐくみ、豊かな海を支える。
 宮城県気仙沼市でカキ養殖を営む著者が、この事実に30年がかりでたどり着くまでをつづった。多くの研究者の協力や助言を得ながら解明に取り組む熱意に引き込まれる。
 「森は海の恋人」を掲げて植林を始めた1989年当時、科学的根拠は乏しかった。研究費を工面してくれた母は大津波の犠牲となり、設備も損壊した。絶望の底で得た「それでも三陸の海は死んでいない」という確信が、出版につながったという。

(引用終了)
<毎日新聞 11/6/2011>

ということで、復興に努力しておられる畠山さんを支援する意味でも、是非本書を購入いただきたい。ただし、本屋によっては絵本の棚に分類されているから見つけにくいかもしれない。

 この本の内容構造は多層である。以下、それぞれの層について見てゆきたい。

1. 復興

 この本の「あとがき」が書かれたのは、東関東大震災からおよそ1ヵ月後の2011年4月、初版発行は同年6月6日である。この本には著者の大災害からの復興への祈りが込められている。

2. 絵本としての魅力

 この本には、以前にも著者とコンビを組んだことがあるという、スギヤマカナヨさんの絵やイラストがたくさん載っている。文章と絵とのハーモニーは楽しく、描かれたイラスト図は内容の理解を助けてくれる。

3. 鉄に纏わる科学知識

 フルボ酸のはたらき、深層大循環、血液と鉄分、オーストラリアのしま状鉄鉱石、鉄炭団子、ムギネ酸、アムール川とスプリングブルームとの関係、巨大魚付林など、鉄に関する地球規模の知識を得ることができる。

4. 流域思想

 畠山さんの「森は海の恋人」活動については、以前「牡蠣の見あげる森」の項でも紹介したことがある。そのとき“流域思想”というキーワードを使った。これは、山岳と海洋とを繋ぐ河川を中心にその流域を一つの纏まりとして考える思想で、これからの食やエネルギーを考える上で重要なコンセプトである。詳しくは「流域思想」、「流域思想 II」などの項を参照していただきたい。

5. 境界学問

 境界学問とは、ある現象について、専門領域を超えて統合的に分析・研究する学問のことである。この本には、生物学や化学は勿論のこと、気象学や海洋学、地質学といった様々な学問が融合する様が描かれている。以前「エッジ・エフェクト」の項で文化の融合について述べたけれど、学問領域においても同じことが云えるわけだ。エッジ・エフェクトは、パラダイム・シフト(その時代や分野において当然のことと考えられていた認識が、革命的かつ非連続に変化すること)を惹起する。パラダイム・シフトについては「パラダイム・シフト」、「パラダイム・シフト II」の項を参照いただきたい。

6. ハブの役割

 上記の新聞書評に「多くの研究者の協力や助言を得ながら解明に取り組む熱意に引き込まれる」とあるけれど、畠山さんは、大切なことがあれば、北海道から東京、京都、山口、沖縄、さらにはオーストラリアへまですぐに飛んでいく。以前「ハブ(Hub)の役割」の項で、知人や友人の数(次数)が多い人が果たす社会的役割について書いたけれど、情熱の人・畠山さんは間違いなく、東北復興を担う「元気なリーダー」のお一人である。

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posted by 茂木賛 at 11:28 | Permalink | Comment(0) | 街づくり

“選手”という呼び方

2011年12月06日 [ 言葉について ]@sanmotegiをフォローする

 先日「日本のモノづくり」の項で、日本のモノづくりの質が高いのは、日本語が母音語であることと、それに伴って起こる「自他認識」の希薄性が「話し手の意識を環境と一体化させる傾向」を生み、それが自然や組織ばかりではなく機械などの無機的環境に対しても働くという「日本語の特質」に由るところが大きいと述べたけれど、この特質は一方において、「自分の属する組織を盲目的に守る力」ともなり、悪くすると機能組織が破綻していても「組織内の秩序を乱さないように努力する力」にまで墜することがある。

 日本語が母音語であることとそれに伴って起こる「自他認識」の希薄性のメカニズムについては、「母音言語と自他認識」の項を参照して欲しい。複雑だが興味深いプロセスだ。

 「相手にあわせる」「迷惑をかけない」「空気を読む」「派閥をつくる」「敬語の使用」「上座と下座」「先輩と後輩」「お辞儀」などといった「出来るだけ周囲に波風を立てないための気配り」は確かに日本独特のものである。以前「上座と下座」の項で、日本にはエレベーターの中にも上座と下座があるらしいと述べたけれど、我々は日常生活の上で常に周囲への気配りを強いられる。

 このことに関連して、先日、新聞のコラムに面白い話が載っていたので紹介しよう。

(引用開始)

後輩の呼び方

 たとえ無名の役者であっても「さん」付け、「君」付けで呼ぶことを心掛けている。呼び捨てにした相手が突然出世し、その時になって「さん」付けで呼ぶのは、ばつが悪いからだ。
 一つの仕事がキッカケで、スターになる芸能界。死体役のA君が、数年後、主役になっていることも珍しくない。
 こうした例は何もタレントだけじゃない。
 僕の放送作家の先輩は、駆け出しの作家を「おい、おまえ」と呼び、そこそこ売れてくると、「○○」と呼び捨てにする。そして、その作家が番組のチーフを担うくらい出世すると、「○○選手」と呼ぶようになる。
 なぜ「選手」なのか?明確な理由は本人に聞かないとわからないが、自分の威厳を保ちつつ、相手への尊敬の念を表すのに、きっとバランスが良い呼び方なのだろう。先輩にとって出世する後輩の扱いは難しい。
 先日、前人未到の三百セーブを達成した中日ドラゴンズの岩瀬仁紀投手は僕の大学の後輩だ。
 プロ野球選手になる前、都市対抗野球で東京に来た際、彼に寿司をおごったことがある。
 「気合入れて頑張れよ」
 先輩面して声を掛けた自分が今ではとても恥ずかしい。
 ちなみに日本を代表する大投手を、僕は何て呼ぶのか?
 「岩瀬選手」である。

(引用終了)
<東京新聞 9/14/2011>

コラムの著者は水野宗徳という放送作家さんで、業界の慣例を正直に面白く書いておられるが、みなさんの所属する組織や業界でも似たような話があるのではないだろうか。

 日本では、機能組織(ゲゼルシャフト)においても、「先輩と後輩」の関係が精神的に維持される。だから、後輩が先輩より偉くなると、組織的には序列が逆転するということで、両者に精神的葛藤が生まれる。とくに先輩の方にその葛藤は強いはずだ。“選手”という絶妙な呼び方が出現するのはそういう理由なのだろう。これも「出来るだけ周囲に波風を立てないための気配り」の典型的な表出形態なのである。しかしこのような「気配り」は、仕事の出来不出来とは関係がない。むしろこういった感情が地下に潜ると、不要ないじめの温床になりかねない。

 日本語の「話し手の意識を環境と一体化させる傾向」は、一方で「日本のモノづくり」の素晴らしさを生むけれど、内向すると「出来るだけ周囲に波風を立てないための気配り」となり、それが地下に潜ると不要ないじめや仕事のサボタージュを生みかねない。「日本のモノづくり」の素晴らしさは、同時にこのような弊害も抱え込んでいることを頭に入れてにおいたほうが良いだろう。

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posted by 茂木賛 at 11:42 | Permalink | Comment(2) | 言葉について

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