夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


3の構造 III

2009年12月28日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 「3の構造」の項を書いたのが今年の8月、その後10月に、“「3」の発想”芳沢光雄著(新潮選書)という本が出版された。その偶然に驚いたけれど、3の重要性について考えている人が他にもいたということで、己の意を強くした。まず同書の裏表紙の紹介文を引用しよう。

(引用開始)

 思考力や応用力は、計算ドリルの繰り返しでは身につかない!数学の世界では、「3」の発想を会得すれば、それ以上の数の事象についても応用によって解けるケースが多い。ティッシュペーパーやドミノ倒しの原理、オモリを使った計測法、3項計算、三段論法、作況指数とジニ係数など、分りやすい例を挙げ、いかに「3」を学ぶことが重要かを説く。「ゆとり教育」で損なわれた「考える数学」が本書で身につく。

(引用終了)

 本のサブタイトルが“数学教育に欠けているもの”とあるように、芳沢氏は、数学教育の見地から3の重要性を説いておられる。詳しくは本書をお読みいただくとして、以下、その骨子を同書の4つの章に沿って纏めてみよう。

第1章 つながっていく性質を持つ「3」

 ドミノ倒しのようにつながっていく現象を理解するのは、「2」ではなく「3」の発想が大切である。

第2章 「3」が要(かなめ)となる世界

 机の脚やカメラの三脚は「3」が特に安定している例だが、ジャンケンなどの「3すくみ」や「三角測量」なども、同じように「3」が重要な意味を持つ。

第3章 関係を定める時に必要な「3」

 「三段論法」などに見られるように、相互に関係する作用を一つずつ整理する上で、3つの関係の仕組みが礎となる場合が多い。

第4章 現象の特徴を表わすことができる「3」

 「3K」などのように、私たちはものごとの現象を3つの要因や特徴で表現することが多い。

 以上だが、この4つの特徴を、以前「3の構造 II」において纏めた三項目と照らし合わせると、

(イ)頂点性
第4章 現象の特徴を表わすことができる「3」

(ロ)安定性
第2章 「3」が要(かなめ)となる世界

(ハ)発展性
第1章 つながっていく性質を持つ「3」
第3章 関係を定める時に必要な「3」

ということになるだろうか。芳沢氏は、本書の最後に以下のように書いておられる。

(引用開始)

「ちえ」には2通りの書き方がある。「知恵」と「智慧」。前者は説明の必要がないだろう。後者は仏教で使われる言葉である。意味は、相対世界に向かう働きの智と、悟りを導く精神作用の慧。物事をありのままに把握し、真理を見極める認識力(『大辞泉』より)。そして、それは「聞慧」「思慧」「修慧」の三つ、「三慧(さんえ)」から成り立つ。
 聞慧とは、授業で聞いたり本を読んだりして、聞いたことや書いてあることを事実として知ることである。
 思慧とは、聞慧として身に付いたものごとに関して、自分なりにそれらの間の繋がりを組み立てたり、それらの背景を理解できるように考えることである。
 最後の修慧は、思慧として身に付いたものごとに関して、きちんと説明できるように書いたり、それらを応用して実践できるようにすることである。
(中略)
 ドミノ倒しのように、次々とつながっていく性質を理解するときの「3番目」、3すくみのように「3」が要となる世界、計算規則の理解で必要な「3」項の計算、3Kや三慧のように物事を説明する上で必要な「3つ」の立場など、それらの中には、日本人を古くから支えてきた「もう1つの選択」というべき「3という発想」に通低するものがあると私は思っている。その忘れかけている大切な発想を意識して毎日を過ごすことが、行き過ぎた合理主義に取り囲まれた現在の日本に、強く求められているのではないだろうか。

(引用終了)
<同書165−173ページ>

我々も、「三慧」を用いて、日々の生活をバランスよく過ごしたいものだ。

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書籍ビジネス

2009年12月21日 [ 書店の力 ]@sanmotegiをフォローする

 以前「山の本屋」の項で、

(引用開始)

 書店というものは、社会に欠かすことの出来ない存在だ。ここでいう「書店」とは、「イハラ・ハートショップ」のような小さな本屋さんばかりではなく、都会の大きな書店、さらには出版業を含むところの、“書物という、人の思考道具である「言葉」を扱う生産活動”全般を指している。人は言葉で思考するから、そういう意味で、書店は社会の力の源泉である。書店は、「アートビジネス」とも隣接しながら、人の生産と消費活動を精神的に支える。書店はまた、社会における多様性と意外性を保証する「言論の自由」の守り手でもある。

(引用終了)

と書いたけれど、ここで一度、書籍ビジネスについて私の考えを整理しておきたい。

1. 「場」の創造

 書店・出版社は、書籍ビジネスを通して、社会の内に「知の交流場所」を創造することが出来る。和歌山の「イハラ・ハートショップ」もそうだし、最近できた丸の内の「松丸本舗」(写真下)もそういう試みだ。先日私は「松丸本舗」で、「松岡正剛の千冊千夜遊蕩編(1327夜)」で取り上げられた“オキシトシン”シャスティン・モベリ著(晶文社)を入手することが出来た。

松丸本舗

2. 効率と効用

 言葉を扱う書籍には、大きく分けて、効率よく知識を身につけるための実用書や研究書と、アート作品としての詩や小説がある。前者(効率書)は人の「生産活動」を支え、後者(効用書)は、人の「消費活動」を支える。書籍ビジネスは、人の「生産と消費活動」両方をサポート出来るのである。

3. 作家の育成

 以前「アートビジネス」の項で、

(引用開始)

 値段の付いた作品はギャラリストやコレクター、出版社などによって市場で売り買いされ、売値と買値の差が利益となる。利益は、宝石の場合などと同様、時間とお金を掛けてそれを発見し保管してきた人々への報酬である。

(引用終了)

と書いたけれど、アート作品同様、「書籍」も市場で売り買いされ、売値と買値との差が書店・出版社の利益となるのが正しい姿であろう。利益は、時間とお金を掛けて書籍を編集・出版・販売してきた人々への報酬である。書籍の市場価値は、作家本人とは何の関係も無い。

 ただし、アーティストが無から生まれ得ないように、作家も何も無いところからは生まれない。昔は、金持ちが作品を買い上げることでアーティストを育てた。今の書店・出版社は、作家が書いたものを加工(編集・出版)販売して社会(読者)から報酬を得ているのだから、社会的な責任として、報酬の一部を割いて作家(とその卵)を育成していかなければならない。様々な作家・ジャーナリストに発表の場を与えることは、「言論の自由」を実践することでもある。

4. ネットの活用

 21世紀はインターネットの時代である。書店・出版社は、電子書籍や電子書籍端末(写真下は私がコンサルを務める会社の電子ペーパーを使った9インチのサンプル)を活用し、「新しい知の交流場所」を創造しなければならない。電子書籍は、紙の本よりも早く、安価に、いつでも(ネット上で)流通させることができる。しかし今後求められるのは、紙の本を単にデジタル化するのではなく、電子書籍ならではの新しい付加価値を作り出していくことだろう。電子書籍端末は、一台に数多くの書籍を格納することができ、文字の拡大や読み上げ機能などにより、視覚障害の人たちにも読書の機会を提供することが出来る。

電子書籍端末

5. 他の「生産と消費活動」を啓蒙する

 以前紹介した「里山ビジネス」の著者玉村豊男氏は、「ヴィラデスト・ガーデンファーム・アンド・ワイナリー」のオーナーでもある。“奇跡のリンゴ”石川拓治著(幻冬舎)は、無農薬りんご農家・木村秋則氏の苦闘の軌跡を描いたものだ。友人の成松一郎氏が書いた“五感の力でバリアをこえる”(大日本図書)は、障害を乗り越える人々の活動を紹介した本だ。書籍はこのように、関連のある他の「生産と消費活動」を啓蒙・サポートすることが出来る。

6. 多品種少量生産

 このブログでは、安定成長時代を支える産業システムの一つに「多品種少量生産」を挙げているが、多様な作家・ジャーナリストに発表の場を与え、リアルとバーチャルにおいて知の交流場所を創造する「書店」は、この「多品種少量生産」システムの中核を担う、重要なビジネスである。

 以上、書籍ビジネスについて整理してきたが、いずれにしても、このビジネスを担うのは、アートビジネスでギャラリストやコレクターに相当するところの、「目利き編集者」であることは間違いない。

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posted by 茂木賛 at 10:32 | Permalink | Comment(0) | 書店の力

街の魅力

2009年12月14日 [ 街づくり ]@sanmotegiをフォローする

 「3の構造」や「3の構造 II」でご紹介した井形慶子さんの新著、“老朽マンションの奇跡”(新潮社)を楽しく読んだ。内容は、東京・吉祥寺にある中古マンションを、ロンドン・フラット風にリフォームし、著者が経営する出版社のスタジオ・倉庫兼、若者社員の住居にしようという試みだ。本の帯の紹介文を引用しよう。

(引用開始)

「住みたい街No.1」吉祥寺で築35年のメゾネットを500万円で買って「ロンドンフラット」に再生!見棄てられたガラクタ物件をわずかな予算で理想の家に作り替え。不況の今だからこそ叶う住宅取得の裏ワザが炸裂する。あなたの住宅感を変える疾風怒濤のドキュメンタリー。

(引用終了)

紹介文に散りばめられた言葉から分る通り、この本には幾つもの「層」があり、その重層性がこの本の魅力と云える。以下、列挙してみる。

1. リフォームが予定内にうまくいくかどうかという、ドキュメンタリー的な面白さ。
2. 経営者としての社員に対する気持ち。組織の適正規模や人を大切にするマネジメントの重要性。
3. 最近の住宅事情や、リフォームに関する実務的知識。
4. 著者の住宅に対する並々ならぬ好奇心と、イギリス人的生き方への共感。
5. 著者の吉祥寺という街に対する愛着。

どの層も面白くまた役に立つのだが、特に、

5.著者の吉祥寺という街に対する愛着

が、このプロジェクト全体の推進力になっていて、本の読後感を豊かなものにしている。

 以前ご紹介した“イギリスの家を1000万円で建てた!”(新潮OH文庫)によると、井形さんのご自宅も吉祥寺エリアにあるという。そのことは、この本でも触れられている。愛着のある街に、「ロンドン・フラット」という新しい価値を付加する喜びが、著者の行動力を支えているのである。

 その吉祥寺の街の魅力とはなにか。“吉祥寺スタイル 楽しい街の50の秘密”三浦展+渡和由研究室共著(文藝春秋)に依って考えてみたい。同書では、吉祥寺の街の魅力を、五つのキーワードを手掛かりに分析している。以下、文章の引用を交えて、それらのキーワードを標してみよう。

I 歩ける

(引用開始)

 吉祥寺は、駅から半径400mの中に、すべてが揃っている。
 歩ける範囲に何でもある。
 路地がたくさんあって、歩くことを楽しめる。
 そして路地ごとにいろいろなカルチャーが育っている。

(引用終了)
<同書30ページ>

II 透ける

(引用開始)

 時代の変化に対応して使い方を変えられる街。
 ハードな都市ではなく、ソフトな街。
 生活に合わせて、さまざまなインフィルを付け加えられる街。
 スケルトンな街。スケルタウン。
 それが吉祥寺だ。

(引用終了)
<同書65ページ>

III 流れる

(引用開始)

 吉祥寺の街路は、多くの街路によって多数の小さな街区が生まれているため、まさに「モザイク状のサブカルチャー」を生み育てるのに最適である。ハイソでファッショナブルな文化も、プアで反抗的な文化も、併存している。

(引用終了)
<同書99ページ>

IV 溜まる

(引用開始)

 吉祥寺は、第三の居場所(行きつけの街のなじみの場所)の宝庫である。こだわりと個性を持った主(あるじ)が居る町の「居間」がたくさんある。その主たちがしつらえた多様な雰囲気と文化を、自分の好みで選択して、一時的に間借りできる。第三の場所は、街にある自分のコーナーでもある。第三の居場所として感じられる場所をたくさん持てる街だから、吉祥寺は住んでみたい街、行ってみたくなる街なのである。

(引用終了)
<同書129ページ。括弧内は引用者による注。>

V 混ぜる

(引用開始)

 吉祥寺の街は、こだわりのコンポーネント・ステレオのように、小さな特色のあるパーツで構成されている。(中略)
 たとえば古いマンションや倉庫跡などに新しい店が入ることは、吉祥寺では日常茶飯事だ。井の頭線ガード横の50年近い、おんぼろな建物は、もともとはキャバレーだったらしいが、その後予備校の倉庫になり、今は、知る人ぞ知る先鋭的なカフェや雑貨店が入っている。(中略)
 こういう新旧のコンポーネント、あるいは住居や店や仕事場というコンポーネントが混ざり合って吉祥寺という街の魅力が増幅されているのである。

(引用終了)
<同書164−165ページ>

いかがだろう。吉祥寺の街は、このような特徴に支えられて、今も「住みたい街No.1」なのである。井形さんのロンドン・フラットも、素敵な魅力のひとつとして、この街にしっかりと根付いていくに違いない。

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跳ねるボール

2009年12月08日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 「興味の横展開」を仕事に活かすということで「個人事業主」の項を書いたけれど、「興味の横展開」という考え方は、勿論、勉強・学習にも活かすこともできる。ただし、ここで云う勉強・学習とは、自らの興味に基づく能動的な知的活動のことであり、お仕着せの受験勉強のことではない。

 最近私の興味を惹いた、熱力学に関する新聞記事を紹介しよう。この記事から、皆さんの興味がどのように展開するか楽しみだ。全文引用する。

(引用開始)

「跳ねて速度アップ 常識覆すボール」熱力学の根本に迫る

 ぶつけた速度よりも速く跳ね返る“常識破り”のボールを作れる可能性があることを、中央大学の国仲寛人助教らが計算機シミュレーションで示した。ボールの持つ熱がボールの運動エネルギーに変わって速度を増す。熱力学の根本に迫る現象という。米物理学会誌に発表し、注目論文として取り上げられるなど話題になっている。
 ゴルフボールも野球にボールも、ぶつけた速度よりも跳ね返ってくるときの速度の方が小さくなる。床で弾むスーパーボールも、跳ね上がる高さがだんだん小さくなる。
 理想的な反発力を持つ物体ならぶつけた速度と跳ね返る速度が等しくなるが、それでも超えることはない、というのが高校の教科書にも書かれた常識だ。
 跳ね返ると速度が落ちるのは、衝突の際に運動エネルギーの一部が熱に変わって逃げてしまうからだ。
 国仲さんは、原子が七百個集まった直径約百万分の三ミリの小さなボールを想定。このボール同士が正面衝突する様子をコンピューターで繰り返し調べた。実際の分子に働くような引力も考慮した。
 その結果、ボールを秒速十メートル前後でゆっくりぶつけたとき、反発の速度が増す現象が二十回に一回程度起きることが分った。速度は最大で一割程度増えた。
 この不思議な現象が起きる主な理由として国仲さんは「ボールの中の個々の原子は熱によって振動している。二つのボールがゆっくり接するとき、原子がちょうど相手をはじき飛ばす方向に振動していれば反発のスピードが増す」と考える。
 つまり、ボールの原子が持っている熱が、ボール全体の運動エネルギーに変わったということになる。熱力学第二法則では、外から手を加えずに熱が運動エネルギーなどの仕事に変わることを禁じている。熱から仕事が取り出せれば永久機関も実現できるからだ。
 計算結果はこの法則を破るように見えるが「反発のスピードが増すのは衝突の5%。全体を平均すれば反発のスピードの方が低くなり熱力学第二法則に反しない」という。
 共同研究者の早川尚男・京都大教授は「ナノサイズのボールをレーザー光で捕まえて衝突させれば、計算だけではなく実際に確かめられる可能性もある」としている。

(引用終了)
<東京新聞4/28/09>

熱力学第二法則を習ったことのある人ならば、誰でも興味を覚える記事だと思うが、いかがだろうか。

 この現象は「ゆらぎ」の一種なのだろうか。シミュレーションということであれば、パラメターの「初期状態」をどのように設定したのか、という点が特に私の興味を惹く。また、「計算だけではなく実際に確かめられる」というけれど、その根拠と方法についても知りたいと思う。

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posted by 茂木賛 at 10:09 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

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