夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


自然の時間

2009年03月31日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 前回「都市の時間」について見たところで、集団を構成するもう一方「自然の時間(t = ∞)」についても触れておこう。まずは「集団の時間」から引用する。

(引用開始)

 身体は自然から生まれ自然へと還るものだ。だから自然 (t = ∞)は、「個」における身体(t = life)の時間と対応する。自然においては全てのものが循環する。循環する時間には果てがない。t = ∞というのは、自然の時間は無限大という意味である。厳密に言えば自然にも寿命があるのだろうが、人知の及ばない範囲の問題なのでここでは無限大としておいてよいだろう。

(引用終了)

ここで時間とは、長短様々な個物の寿命を集積した無限大の時間である。次に前回同様「効率と効用」から引用する。

(引用開始)

 「効率」には値段がつけられるが、「効用」には値段がつけられない。新幹線チケットに値段はつくが、親しい友人と楽しむ旅に値段はつかない。

(引用終了)

「効用」は、市場を介して流通させることが出来ず、便利さの度合いを比較することが出来ない。利益率という比率(ratio)で計算することが出来ない。「効用」は利益という余剰を生まず、生産と消費の等価性そのものとして自然と共にある。

 以前「アートビジネス」のなかで、

(引用開始)

 アートとは、自然 (t = ∞)の中から幾つか個別な時間を切り出してきてコラージュ(組み合わせ)し、他人の脳(t = 0)の前へ提示することだ。

(引用終了)

と書いたけれど、「効用」を齎すサービスは、自然 (t = ∞)の中から幾つか個別な時間を切り出してきてコラージュ(組み合わせ)し、人の身体(t = life)を癒すことだといえるだろう。山奥の温泉に浸かってゆったりと身体を伸ばしたとき、人は、幾ら儲かったかでは無く、幾日寿命が延びたかを体感する筈だ。

 その伝で「効率」を求める商品を定義すると、それは、自然 (t = ∞)の中から幾つか個別な時間を切り出してきてそのスピードを加速し、人の生産活動に役立てることだといえるだろう。原始的な手斧から原子力発電まで、あらゆる道具は、自然 (t = ∞)の中から幾つか個別な時間を切り出してきて、そのスピードを加速することによって作られる。

 時間の加速は人々に数多くの生活上の便益を与えた。しかし、度を越した加速は自然環境を悪化させる。これからの安定成長時代は、自然の環境負荷を増大させない「資源循環」が求められるのだ。

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都市の時間

2009年03月24日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 「集団の時間」で述べた、都市の時間について敷衍しておこう。都市(人が便利さを求めて作り出したもの全般)の時間原理はなぜ金利(=interest)なのか。まずは「集団の時間」から引用する。

(引用開始)

 集団においては、人の脳が作り出したものに、何らかの公共的な序列をつける必要が出てくる。公共的な序列に組み入れられたもの(値段が付けられたもの)は、市場を介して流通させることが出来る。その値段を決める市場の時間原理が金利(=interest)なのである。

(引用終了)

ここでいう時間とは、人が考え出した時計で測ることができる均一な時間である。次に前回の「効率と効用」から引用する。

(引用開始)

 「効率」には値段がつけられるが、「効用」には値段がつけられない。新幹線チケットに値段はつくが、親しい友人と楽しむ旅に値段はつかない。

(引用終了)

市場を介して流通させることが出来るのは「効率」、すなわち便利さの度合いを比較できるものである。

 市場における商品の値段の高低は、数値化された便利さ度合いの比較である。数値化された便利さは、利益率という比率(ratio)で計算することが可能になる。数値化して比率(ratio)で表すわけだ。あるものを使うと、他のものを使う場合に比べてどれだけ余剰利益を生むかということである。

 生産と消費の等価性からいえば、利益という余剰は計算上の架空ものだが、その金を銀行に預けておくと金利が付く。人は、市場で、銀行金利とその商品の利益率を比較して、銀行に預金するか商品に投資するかを決定する。市場における商品価値の計算基準は金利なのである。

 市場における商品の値段は金利との比較で成り立っている。ではなぜそれが「時間」という単位で表されなければならないのか。再び前回の「効率と効用」から引用しよう。

(引用開始)

 「効率」には尺度としての時間が関わっている。「効用」に共通の尺度は存在しない。

(引用終了)

 新幹線がなぜ高いかというと、ローカル線よりも速く目的地へ着くからであり、それは時間の関数である。勿論ここでいう時間とは、時計で測ることができる均一な時間である。貴重品がなぜ高いかといえば、それを入手するのにどれだけ手間隙をかけたかということであり、即ち時間の関数である。「効率」が良いということはより速いということ、即ち加速度がより大きいということなのである。金利も勿論均一な時間の関数である。

 金利の増減を基準にして、人が便利さを求めて作り出したもの全般の値段が高下する。市場における商品の値段は金利との比較で成り立っており、比較に用いられる唯一の尺度は、時計で測ることができる均一な「時間」なのである。

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posted by 茂木賛 at 12:48 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

効率と効用

2009年03月17日 [ 生産と消費論 ]@sanmotegiをフォローする

 「効率」と「効用」という二つのキーワードから、経済を考えてみよう。ここでいう経済とは、 “それ自体法則であるところの自然界の諸々の循環を含めて人間を養うシステム”(6ページ)「経済人類学を学ぶ」栗本慎一郎編著(有斐閣選書)を指し、社会の根本システム、その理法・摂理を意味する。

 これまで「生産と消費について」などで見てきた「生産と消費論」を纏めると、

1. 人は社会の中で生産(他人のための行為)と消費(自分のための行為)を繰り返していく。人は自分のために生まれるのではなく社会のために生まれてくる。
2. ある人の生産は他のある人の消費であり二つは等価である。生産は主に理性的活動であり消費は主に感性的活動である。
 
というものだった。詳しくはカテゴリ「生産と消費論」の記事を順にお読みいただきたい。

1. 個人における生産と消費の循環(「人の生産活動に注目するということ」)
2. 社会における生産と消費の交換(「生産と消費について」)
3. 生産と消費の相補性(「アフォーダンスについて」)
4. 生産と消費の人間属性(「理性と感性」)
5. マーケティングにおける生産と消費(「統合と分散」「統合と分散II」)
6. 生産あっての消費(「生産が先か消費が先か」)
7. 生産の質を高める消費(「贅沢の意味」)
8. 生産と消費の等価性(「人を褒めるということ」「生産と消費の等価性」)

 ここで、生産活動から生ずる便益のうち、計量化できるものを「効率」、出来ないものを「効用」と呼ぼう。A地点からB地点まで移動するのに、どれだけ早く移動できるかが「効率」であり、道中をいかに楽しめるかが「効用」である。

 「効率」には値段がつけられるが、「効用」には値段がつけられない。新幹線チケットに値段はつくが、親しい友人と楽しむ旅に値段はつかない。どこかのクレジットカード会社にも、友情や愛情など、お金では買えない素晴らしいものを「プライスレス」と表現する宣伝があった。

 「効率」には尺度としての時間が関わっている。「効用」に共通の尺度は存在しない。コンピューターなどの「効率」系商品は都市で流通し、温泉などの「効用」系サービスは自然と共にある。「効率」は脳が判別し、「効用」は身体が実感する。「効率と効用」は互いに影響しあいながら、社会の“人間を養うシステム”を構成している。人にとって脳と身体のバランスが大切なように、社会にとっては、効率と効用(=都市と自然)のバランスが重要である。

 以前「競争か協調か II」の最後に、

(引用開始)

ビジネスの難しいところは、「生産と消費との等価性」を念頭に置きつつ、社会(都市)の約束事としてのお金の必要性を忘れてはならないところにある。(中略) 経営とは「金と良心との両立」を図ることなのである。

(引用終了)

と書いたけれど、社会における「効率と効用」のバランスは、経営における「金と良心との両立」と重なっている。

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posted by 茂木賛 at 12:40 | Permalink | Comment(0) | 生産と消費論

リーダーの役割

2009年03月10日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 先回の「モチベーションの分布」を考慮しながら、目的集団におけるリーダーの役割について考えてみたい。これは「金属吸着剤」へいただいたコメントに触発されたことでもある。以下、会社の組織を例にとって見ていこう。

 リーダーはまず、社員を活かさなければならない。これは誰もが同意する役割だろう。その為に適正な給料を払うことは勿論だが、それだけでは不充分で、どうにかして「やる気」を引き出さなければ、社員を本当に活かしたことにはならない。しかし「モチベーションの分布」で見たように、ある目的に対する「やる気」はその人の興味の度合いに比例し、組織にはどうしても「全体のうち2割の人はよく働き、6割はふつうに働き、そして残りの2割はあまり働かない」という正規分布が出現してしまう。以前「組織の適正規模」で、

(引用開始)

 企業における組織の役割は、その構成メンバー全員が企業の「理念(Mission)と目的(Objective)」を理解し、”plan, do, see”のサイクルを通して、その目的を達成していくことにある。

(引用終了)

と書いたけれど、「理念と目的」は理解できても、全員目的に対して「やる気」が出るかどうかはまた別の問題なのだ。

 そうとするならば、リーダーの仕事は、皆の「やる気」を強引に会社の目的そのものに適合させようとするのではなく、敢えてモチベーションの分布を自然なことと弁えて、目的を細分化し、その上で適材適所を図ることだろう。研究開発に向いている人、セールスに向いている人、経理に向いている人などなど。いわば組織の内部にモチベーションのマトリックスを編み込むわけだ。目的と一見繋がらないこと(たとえば子育てなど)でも、うまく工夫(就業時間の調整など)すれば編み込めるはずだ。勿論、社員の単なる悪癖や怠慢は矯正しなければならない。

 さらに、適材適所だけで「やる気」を発揮させられない場合は、社員の転職や独立を支援することもリーダーの大切な仕事だと思う。事業の一部を「カーブアウト」するのも、社員の「やる気」を生かす優れた方法だ。

 社員が何に興味を持っているのか、何に向いているのかをよく見て、社内外で適材適所を図るのがリーダーの役割の第一である。このことは、「モチベーションの分布」で紹介した西成活裕氏が指摘する「無駄を生かす」ことにもつながる考え方だろう。

 次に、リーダーの手元に集まる情報について考えてみる。上記「組織の適正規模」で次のように指摘した。

(引用開始)

 安定成長時代の産業システムにおいては、市場や技術の変化が激しく、それに伴ってリーダーの方針や戦略も刻々変化する。また社員の職能も高付加価値化してくる。だから最新の情報を伝達するには、社員との意思疎通を一週間単位程度で繰り返さないと充分ではない筈だ。階層性の多い組織では、リーダーの意志が末端まで到達する間に、早くもリーダーの方針や戦略が変化してしまうのである。

(引用終了)

経営に必要な情報は、どうしてもリーダー及びその周辺に集中する。内容は変化し量は増えていくから、組織全体における情報量の分布は、概ね「ベキ則」に従う。

 ベキ則分布については、以前「ハブ(Hub)の役割」でスケールフリー性ネットワークとして説明した。構成要素(この場合は情報)自体が成長し、ネットワーク上優先的選択(この場合はリーダーとその周辺に情報が集中すること)が起きる場合の法則で、80:20の法則(全体の20%の人が80%の収入を得るという譬え)のように、平均値や分散値が捉えられない分布である。

 この分布は「モチベーションの分布」で引用した「無駄学」西成活裕著(新潮選書)のこの部分と重なる。

(引用開始)

トップ2割の人が企業の利益の8割を稼ぎ、残りの8割の人は利益の2割しか貢献していない、という意味で、「8対2の法則」ともいわれる。

(引用終了)

 会社の稼ぎが情報量に比例する、というのは直感的にも分かりやすい。ところで、社員のモチベーションの分布は、釣鐘型の正規分布に従うということだった。このあたり紛らわしいのでもう一度整理してみよう。

社員のモチベーション: 釣鐘型の正規分布に従う。
会社の稼ぎや情報密度: ベキ則分布「8対2の法則」に従う。

 情報密度はベキ則分布に従うから、リーダーは社員との情報交換を頻繁に繰り返さなければならない。全体の情報量が多ければ収益のチャンスも増える。また情報が共有されればされるほど組織の活性化が進むことは、「相転移と同期現象」や「エッジ・エフェクト」などで考察した。これは、以前「ハブ(Hub)の役割」で書いた、

(引用開始)

 多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術といった、安定成長時代の産業システムは、スモールワールド性がつくり出す「多様性」と「意外性」が発展の糧になる。だからハブの役割は、広く門戸を開き、公平性(次数相関「±0」)を心がけることで、数多くのリアルな「場」を作り出し、社会のスモールワールド性をより加速させることなのだ。

(引用終了)

という部分と重なる筈だ。リーダーの役割の第二は、情報共有による社内の活性化である。

 かくて、リーダーの役割は、第一に構成員の適材適所を図ること、そして第二に情報共有による組織内の活性化である、と纏めることが出来る。こう書くと至極当然のようだが、この二つはそれぞれ別の理論的根拠によって立つことに留意して欲しい。

 目的集団におけるリーダーは、構成員のやる気に関して、「モチベーションの分布」に配慮しつつ、手元に集まる情報密度に関しては、公平性(次数相関「±0」)を心がけなければならない。前者は釣鐘型の正規分布への対応であり、後者はベキ則分布「8対2の法則」への対応である。

 この二つの対応を混同したり、逆に扱ったりすると組織はたちまち非活性化する。組織の目的に対して誰もが「やる気」を持つべきだとか、重要な情報は組織内で共有しない方が安全だとか考えているリーダーはまだまだ多い。しかしそういった組織は、自然法則と社会理法とに反しているが故に、やがて崩壊していくだろう。

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モチベーションの分布

2009年03月03日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 以前「ハブ(Hub)の役割」で紹介した「渋滞学」の著者西成活裕氏の最新本のなかに、

(引用開始)

 これ(アリの行動)に関連して、企業や組織において「2対6対2の法則」といわれているものがある。これは、全体のうち2割の人はよく働き、6割はふつうに働き、そして残りの2割はあまり働かない、ということを表したものだ。そしてこのトップ2割の人が企業の利益の8割を稼ぎ、残りの8割の人は利益の2割しか貢献していない、という意味で、「8対2の法則」ともいわれる。しかしこの働かない集団が将来の生存のために大きな役割を果たす可能性があるのがアリの社会なのだ。働かない人を抱え込むのは短期的には無駄と考えられるが、長期間で見れば何か別の角度から大きな貢献をしてくれるかもしれない。

(引用終了)
<「無駄学」西成活裕著(新潮選書)39ページより。カッコ内は引用者による補足。>

という話がある。

 これは私が組織で働いていたときの経験から云える事なのだが、いろいろな集団の「よく働く2割の人」だけを集めてきて、別の目的を与えて働いてもらうと、なぜか再び「全体のうち2割の人はよく働き、6割はふつうに働き、そして残りの2割はあまり働かない」という現象が起こる。

 西成氏の論点は、一見無駄と思われる中にも将来役に立つものもあるから、無駄かどうか判断するにはまず目的を定めることが重要だということなのだが、私の経験則から云えるのは、目的を変えると再び無駄が生まれるということなのである。

 この「よく働く、ふつうに働く、あまり働かない」人たちの分布を「モチベーションの分布」と呼ぼう。「2対6対2の法則」は、「全体のうち2割の人はよく働き、6割はふつうに働き、そして残りの2割はあまり働かない」ということだから、この分布は概ね釣鐘型の「正規分布」に従うと思われる。

 釣鐘型の「正規分布」は、人の身長やみかんの大きさなど、自然界に広く見られる現象だ。モチベーションとは「やる気」である。人が興味を持つ対象はそもそも千差万別で、ある目的に対する「やる気」は、その人の興味の度合いに比例するだろうから、無作為にある目的を定めると、どうしても「全体のうち2割の人はよく働き、6割はふつうに働き、そして残りの2割はあまり働かない」という分布が出現してしまうのだろう。

 ある目的集団では皆の足を引っ張っている人が、別の目的集団ではリーダーシップを発揮したり、会社でバリバリ働くやり手の男性が、家ではなにもしないグータラ亭主だったりするのは、概ねこの法則に従っているわけだ。

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posted by 茂木賛 at 12:33 | Permalink | Comment(0) | 非線形科学

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