夜間飛行

茂木賛からスモールビジネスを目指す人への熱いメッセージ


脳における自他認識と言語処理

2009年02月24日 [ 言葉について ]@sanmotegiをフォローする

 これまで「脳について」「言葉について」「脳と身体」などで取り上げてきた、月本洋氏の「日本人の脳に主語はいらない」(講談社選書メチエ)には、脳における自他認識と言語処理について興味深い仮説がある。

 氏はこの仮説から、「日本語は、空間の論理が多く、主体の論理が少ない。これに対して、英語は、主体の論理が多く、空間の論理が少ない」(同書235−236ページ)という現象を解き明かそうとされている。云うまでもなく、この現象は私の指摘する、

A Resource Planning−英語的発想−主格中心
B Process Technology−日本語的発想−環境中心

と重なっている。氏の仮説について見ていこう。

 先ず氏は、いくつかの言語の比較から、「日本語は世界の言語の中で、母音を最もよく発音する言語である。これに対して英語は、母音の比重が小さい。」(同書2−3ページ)という特徴を示す。

 次に各種実験で、日本人が母音を左脳で聴くこと、イギリス人が母音を右脳で聴くことを検証する。なぜそうなるかについて、氏は「人間は言葉を理解する時に、仮想的に身体を動かすことでイメージを作って、言葉を理解している」(4ページ)という「身体運動意味論」、心と脳と社会の関係、脳神経回路の学習による組織化プロセス、などから説明していく。

 次に、最新の脳科学の実験により、ひとは自分と他人の理解を右脳で処理していることを導く。

「従来の脳科学では、自己意識と言語が密接に関連していて分離できないという認識から、自己意識は言語野のある左脳にあるとしてきた。ところが最近の脳科学の実験は、自己意識は右脳にあるということを示している。」(113ページ)

 この指摘は重要だ。この発見から氏は、ひとの発話が母音を内的に「聴く」ことから始まることを踏まえ、人の言語野は左脳にあるから、母音を右脳で聴く英国人は、自他を識別する右脳を刺激しながら(左脳で)言葉を処理し、日本人は、自他を識別する右脳を刺激せずに(左脳で)言葉を処理することになる、と想定する。

 すなわち、自他を識別する右脳を刺激しながら(左脳で)言葉を処理する英国人は主体の論理が多くなり、自他を識別する右脳を刺激せずに(左脳で)言葉を処理する日本人は主体の論理が少ないことになる、という訳だ。

 尚氏は、日本語が世界の言語の中で、母音を最もよく発音する言語であること、日本語は主語や人称代名詞をあまり使用しない、という二点から、「母音の比重が大きい言語は主語や人称代名詞を省略しやすい」(第5章)と仮定されているが、これは(氏も書かれているように)まだ検証が足りず、私の今までの考察(「日本語について」「視覚と聴覚」などで見た日本語に擬音語や擬態語が多いこと)からして、むしろ原因と結果を逆転させて「主語や人称代名詞を省略する日本文化は母音の比重が大きい」とした方が自然だと思われる。

 こう考えれば、一連の事象を、

I   日本語には身体性が強く残っていて母音の比重が大きい(文化的特徴)
II  日本人は母音を左脳で聴く(身体運動意味論などより)
III  日本語は空間の論理が多く、主体の論理が少ない(脳科学の知見より)
IV  日本語に身体性が残り続ける(社会的特性)

という循環運動(IVから再びIへ)として捉えることが出来る。こう捉えれば、日本人の脳と身体(日本社会における都市と自然)のバランスを考えていく上で、生産的な議論が可能になると思う。

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金属吸着剤

2009年02月17日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 以前「レアメタル」で取り上げた希少金属のリサイクルについて、最新技術に関する新聞記事があったので紹介しよう。

(引用開始)

レアメタル回収ザクザク
―果物の皮や古紙利用で吸着剤―

 パソコンや携帯電話等には金のほか、プラチナやパラジウムなどレアメタル(希少金属)が含まれ、その廃棄物は「都市鉱山」とも呼ばれる。果物の皮と古紙から摘出した成分を用い希少金属を回収する吸着剤を、佐賀大理工学部の井上勝利教授(機能物質化学)らのグループが開発した。低コストで有害物質も出さないといいう、注目を集めそうだ。

 井上教授らは、大量廃棄される小型家電や電子部品に含まれる金属資源を効率的に回収する方法を検討。その結果、身近にあるレモンや柿の皮に含まれるポリフェノールや、古紙が含有するリグニンとセルロースに金属を吸着する性質があることに着目した。
 吸着剤は、これらの成分をアミノ基などと化学反応させて開発。管に吸着剤を充てんさせ、塩基で溶かした電気・電子部品の廃液をろ過すると、果実の吸着剤は金を100%回収でき、古紙の吸着剤はプラチナとパラジウムをいずれも80%以上回収できた。
 従来の活性炭や高分子樹脂吸着剤は吸着量が少ない上、特定の金属を抽出できなかった。今回開発された吸着剤は、反応させるアミノ基の種類によって一種類の金属を選択的に吸着できる。
 また活性炭は大掛かりな排水処理が必要で、高分子樹脂吸着剤はダイオキシンを発生させる弊害があったが、開発された吸着剤は環境に負荷をかけない。
 従来の方法に比べ、コストは半分から十分の一で済み、吸着容量も従来の三倍以上という。
 井上教授は『安価な材料で価値のあるものを回収できる。循環型社会の一翼を担う技術になれば』と語る。今後は連続的な回収実験を行い、実用化に向けた共同開発の企業を募集する計画だ。

(引用終わり)
<東京新聞「話題の発掘」1/8/2009>

 これまで安定成長時代の産業システムとして挙げた、

1. 多品種少量生産
2. 食の地産地消
3. 資源循環
4. 新技術

について、「建築士という仕事」で書いたように、これら四つの産業システムが複数関連したビジネスは、一つだけの場合に比べて、当然時代を牽引する力がより強くなる。今回紹介した「果実吸着剤を使った希少金属リサイクル」は、

1. 多品種少量生産(多種類の金属回収)
2. 資源循環(金属リサイクル)
3. 新技術(果実や古紙を使った吸着剤)

が関連するビジネスであり、これからの時代、重要性が増すだろう。ちなみに、今日の東京新聞(2/17/2009)には、「工業廃水からレアメタルの回収」という記事もあった。

 安定成長時代の四つの産業システムのなかでも、「新技術」に関連するビジネスは、他社がなかなか真似できないという意味で特に有望だと思う。これからもいろいろな「新技術」に注目していこう。

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posted by 茂木賛 at 09:20 | Permalink | Comment(2) | 起業論

エッジ・エフェクト

2009年02月10日 [ 非線形科学 ]@sanmotegiをフォローする

 先日「相転移と同期現象」のなかで、“生産と消費の連鎖が同期すると、相転移現象としての社会の活性化が生まれる”と書いたけれど、社会の活性化に役立つもう一つの効果が「エッジ・エフェクト」である。

 エッジ・エフェクトとは、異なるモノが接する界面から新たなコトが生成(融合)するダイナミズムのことを云う。相転移を熱力学的な現象とすれば、エッジ・エフェクトは化学反応的な現象と言えるだろう。チェロ奏者のヨーヨー・マ氏は、「アートビジネス」で紹介した分子生物学者の福岡伸一氏との会談のなかで、

(引用開始)

M (前略)生物学にも、確か2つの生態系が出会う場所で生成される現象を呼ぶ熟語として、「エッジ・エフェクト」という言葉があるよね。
F エッジ・エフェクト……界面作用ですね。
M 生態学的にいうと、森林と砂漠の界面にあるサバンナ、あるいは地政学的(に)いうと、フランスとドイツの界面にあるアルザス・ロレーヌ地方。そういう場所では、何か激しい、そしてすばらしいことが起こる。

(引用終わり)
<「ロハスの思考」福岡伸一著(ソトコト新書)224−225ページより。Mはマ氏、Fは福岡氏。カッコ内は引用者による補足。>

と語っておられる。マ氏自身中国人を両親としてパリで生まれ、間もなく一家でニューヨークへ移り住んだ経歴の人だから、経験的にもエッジ・エフェクトやフュージョン(融合)という概念に触発されるのだろう。

 「マージナル・マン」という言葉がある。「部落問題・人権辞典ウェブ版」から一部引用しよう。

(引用開始)

 異質な諸社会集団のマージン(境域・限界)に立ち、既成のいかなる社会集団にも十分帰属していない人間。境界人、限界人、周辺人などと訳される。マージナル・マンの性格構造や精神構造、その置かれている状況や位置や文化を総称して、マージナリティーと呼ぶ。マージナル・マンの概念は、1920年代の終わり頃に、アメリカの社会学者バークが、ジンメルの<異邦人>の概念(潜在的な放浪者、自分の土地を持たぬ者)の示唆を受けて構築した。(中略)

 マージナル・マンは、自己の内にある文化的・社会的境界性を生かして、生まれ育った社会の自明の理とされている世界観に対して、ある種の距離を置くことが可能である。それゆえにマージナル・マンは、人生や現実に対して創造的に働きかける契機をもっている。

(引用終わり)

 マ氏は、正にこのマージナル・マンとして、「シルクロード・プロジェクト」など、様々な分野で活躍されている。マージナル・マンは、エッジ・エフェクトに敏感だ。私も小学生のときに1年半ニューヨークで暮らし、成人してからも仕事で13年間アメリカに居た経験があるから、マージナル・マンとしての素地があると思う。起業支援などを通して様々な人と知り合うことに意義を感じているのは、きっとそのせいに違いない。今度のフラクターマン氏の講演のお手伝いも楽しみだ。これからもいろいろな「場」でエッジ・エフェクトを機能させていきたい。

 ところでマ氏と福岡氏との会談は、日本におけるマ氏のチェロ演奏会のときに行なわれたものらしく、冒頭、福岡氏が当日の演奏曲目を紹介している。その中に、J・S・バッハ「サラバンド(無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調)」があった。バッハの無伴奏チェロ組曲は全6曲あって、スペインのチェロ奏者パブロ・カザルスの演奏が有名だが、そのビデオの一部が先日NHK・BSの「名曲探偵アマデウス」で紹介されていた。

 「名曲探偵アマデウス」は、元天才指揮者で探偵の天出臼夫と、音感だけは抜群の助手響カノンの二人が、数々のクラシック名曲の謎に挑むという愉快な番組だ。チェリスト古川展生氏の演奏を聴きながら、バッハの特徴とされる三つの旋律の流れ(ポリフォニー)、重音(複数の弦を同時に弾くこと)や開放弦の効果、五弦のチェロなど、曲の特徴やこの曲に纏わる作曲家の想いについて、天出臼夫探偵が(依頼人に対する謎解きの形で)次々に説明していく。

 バッハの無伴奏組曲は勿論ヨーヨー・マ氏も録音している。私の持っているCDは、”Inspired by Bach・The Cello Suites, Yo-Yo Ma”(Sony Records)という題名で、様々なアーティストとのコラボレーションをフィルムにしたときのものだ。”From the Six-Part Film Series”という副題が付いている。そのうち第5番は「希望への苦闘」というタイトルで、歌舞伎俳優・坂東玉三郎の舞踏との共同作品である。

 そういえば、「ホームズとワトソン」で述べた探偵(Resource Planning)と助手(Process Technology)の役割分担は、全体を大局的に俯瞰して事件の謎を解いていく探偵天出臼夫と、与えられた事件の環境に入り込んで天出を助ける役割の助手響カノン、ということで、(だいぶコメディー・タッチだが)この名曲探偵コンビでも見事に描き分けられていて興味深い。

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posted by 茂木賛 at 10:16 | Permalink | Comment(1) | 非線形科学

組織の適正規模

2009年02月03日 [ 起業論 ]@sanmotegiをフォローする

 多品種少量生産、食品の地産地消、資源循環、新技術といったこれからの新しい産業システムに対応する為には、大きな規模の企業よりもスモールビジネスの方が有利であることを、これまで、インターネットの普及(「スモールワールド・ネットワーク」)、効率とリスク分散(「カーブアウト」)、素早い経営判断の必要性(「カーブアウトII」)、地域密着型経営(「カーブアウトIII」)などから考察してきた。ここでは、組織の適正規模という側面からスモールビジネスの利点を考えてみよう。

 企業における組織の役割は、その構成メンバー全員が企業の「理念(Mission)と目的(Objective)」を理解し、”plan, do, see”のサイクルを通して、その目的を達成していくことにある。(詳しくは「理念(Mission)と目的(Objective)の重要性」、「爆弾と安全装置」、「ホームズとワトソンII」などを参照のこと)

 リーダーとしての社長は、自社組織がうまく回っているかを常に見ていなければならない。その為には、組織メンバーとの意思疎通を図ることが大切であることは云うまでもない。さて、社長が一日にじっくりと話し合うことのできる相手社員は何人ぐらいだろうか。皆さんも各々考えてみて欲しい。一日に一体何人の部下とじっくり話すことができるだろうか?

 じっくり話し合う時間を20分程度としても、三人で1時間である。業務時間を一日10時間として、忙しい業務時間中様々な仕事をこなしながらだから、一日せいぜい5、6人というところではないだろうか。一週間にすると、25から30人程度である。出張などが入れば勿論時間はもっと少なくなる。

 次に情報伝達における組織の階層性の問題について考えてみよう。高度成長時代を支えた大量生産・輸送・消費システムにおいては、市場や技術の変化も比較的穏やかで、社員の職能も単純化が可能だったので、階層の多い組織でも、時間をかければリーダーの意志は組織の末端まで届いただろう。

 しかし、安定成長時代の産業システムにおいては、市場や技術の変化が激しく、それに伴ってリーダーの方針や戦略も刻々変化する。また社員の職能も高付加価値化してくる。だから最新の情報を伝達するには、社員との意思疎通を一週間単位程度で繰り返さないと充分ではない筈だ。階層性の多い組織では、リーダーの意志が末端まで到達する間に、早くもリーダーの方針や戦略が変化してしまうのである。

 こういう会社は、外から見ると組織全体の動きがギクシャクしたものとして映る。それだけならばまだ良いが、極端な場合、社長が「甲」といっているのに、右の組織が「乙」、左の組織が「丙」と云っている、などということが頻繁に起こりうる。みなさんの会社は如何だろうか?

 次に、社員同士の意思疎通という面から組織の適正規模を見てみよう。これも同じく業務時間を一日10時間として、忙しい業務時間中様々な仕事をこなしながらだから、一日せいぜい5、6人というところだ。一週間でやはり25から30人程度。逆に云うと、30人規模の組織であれば、社員同士のコミュニケーションも充分に取れる訳だ。チームワークがうまく機能すれば、「相転移と同期現象」で述べた、非線形的な現象(信じられないような力が発揮されたり、素晴らしい企画が生まれたりすること)も起こりやすい。

 以上見てきたように、従業員30人規模のスモールビジネスは、組織の規模という面から見て、とても効率が良い筈だ。スモールビジネス・サポートセンターのトップページに小さな文字で、「ここでいうスモールビジネスとは、社長一人から全員で30人くらいまでの比較的小規模なビジネスを指します。」と書いてあるのはそういう意味が籠められている。勿論、業務内容によって、情報伝達以外の面から見た様々な適正規模があるから、あくまでも原則論として理解して欲しい。

 さて、小さな組織は、「理念(Mission)と目的(Objective)」さえしっかり出来れば、短期間のうちにスタートしやすい。「チームプレイ」では、雇用機会の減少は、スモールビジネスにとって優れた人材を雇うチャンスであると書いたけれど、ここへ来て大きな組織から離れた人の中で、自分の得意分野で社会へ貢献したいと考えている人は、この際、積極的に起業することを志してみてはいかがだろう。

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posted by 茂木賛 at 11:35 | Permalink | Comment(0) | 起業論

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