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新しい統治正当性

2019年07月15日 [ 公と私論 ]@sanmotegiをフォローする

 「神道について」、「戦国史の表と裏」、「幕末史の表と裏」でみてきたように、秀吉から明治維新に至る列島の統治正当性は「神国日本」にあった。日本は天皇を祖とする神国であるという統治の正当化。

 西洋のキリスト教、ユダヤ教、中東のイスラム教、中国の儒教といった宗教は、それぞれ行動規範としての「教義」を持つ。それが国家統治における法の基となる。しかし神道は、独自の教義を持たない。それ故に、信徒の行動に歯止めがかからず、国家統治の思想としては危険極まりない。戦前の日本はそのために無謀な戦争に突入した。

 政治学者の白井聡氏は、『国体論 菊と星条旗』(集英社新書)において、戦後のアメリカによる列島統治正当化は、明治維新の枠組みの流用だったと論じている。この本は2018年4月に出版された。同年6月の新聞書評を引用しよう。

(引用開始)

対米従属なぜ 大胆な全体像

 日本はなぜかくも対米従属的なのか。トランプ大統領の機嫌を取ることにやっきな安倍政権の動きをみるたびに誰しも思うこの疑問を、著者は「国体」という意外な言葉で説明する。
 一般的に国体とは、戦前日本の特殊な国家体制を意味する。天皇は父として臣民を慈しんでいる。だから臣民は喜んで天皇に奉仕しなければならない。このように天皇と臣民は家族であり、その関係は単なる支配・服従ではないとされた。
 著者は、この構造を戦後の日米関係にも見いだす。アメリカは慈父として日本を守ってくれている。だから日本は「思いやり予算」などで答えなければならない。戦後の日本は、天皇の上にアメリカを戴くかたちで国家システムを再編し、存続させたというのである。
 この体制では、日本の自立など望みがたい。「戦後の国体」に忠実であるほど、立憲主義を破壊してでも、沖縄を足蹴にしてでも、今上天皇を蔑ろにしてでも、アメリカに付き従わなければならないからだ。その果てに待つものが破滅であろうと、献身的な従属は止まらない。
 本書は、日本の戦前と戦後を「国体の歴史」としてパラレルに捉え直し、その形成から崩壊までを大胆に論じている。多くの読者を魅了しているのも、複雑な近代史を独創的かつ図式的に整理し、「なぜ対米従属が止められないのか」との疑問に「それは国体だからだ」と明確に答えているからだろう。
 もちろん明快さの裏には強引さが隠れている。だが、昨今の歴史研究は実証を重んずるあまり、しばしば細部にこだわり全体像の提示を軽んじてきた。その反動が「大東亜戦争は聖戦だった」式の大づかみすぎる歴史観の流行ではなかったか。
 読者は見取り図を求めている。その欲望をむげにしてはならない。今日の課題は、陰謀論に警戒しつつも、重箱の隅いじりに陥らず、全体像の向上を図ることだろう。本書の受容も、その文脈に置くと生産的である。

(引用終了)
<朝日新聞 6/2/2018(フリガナ省略)>

 著者は戦前と戦後の「国体の歴史」をそれぞれ三つの段階、

<戦前>

「天皇の国民」:明治維新から明治天皇没(1912年)まで。
「天皇なき国民」:大正政変から男子普通選挙法(1925年)まで。
「国民の天皇」:三・一五事件から敗戦(1945年)まで。

<戦後>

「アメリカの日本」:敗戦から連続企業爆破事件(1975年)まで。
「アメリカなき日本」:ロッキード事件からバブル崩壊(1993年)まで。
「日本のアメリカ」:阪神淡路大震災から今上天皇「お言葉」(2016年)まで。

に分け、パラレルに展開する国民の意識変遷を概観する。その上で著者は、今上天皇の「お言葉」は、「アメリカを事実上天皇と仰ぐ戦後の国体において日本人は霊的一体性を本当に保つことができるのか」との問いかけであるとし、歴史の転換を画するものでありうるという。ただし、

(引用開始)

「お言葉」が歴史の転換を画するものでありうるということは、その可能性を持つということ、言い換えれば、潜在的にそうであるにすぎない。その潜在性・可能性を現実態に転嫁することが出来るのは、民衆の力だけである。
 民主主義とは、その力の発動に与えられた名前である。

(引用終了)
<同書340ページ> 

として論考を終える。

 戦前の天皇を頂点とする国体は、「神国日本」というフィクションの上に成り立っていた。戦後のアメリカを頂点とする国体も、彼らが導入した象徴天皇制によって、相変わらず同じフィクションの上に成り立っている。「神国日本」という神輿の担い手は、「歴史の表と裏」で示唆したように、戦前から今に至るまで基本的に変わっていない。この認識がまず重要だ。

 歴史の転換を迎える日本は、新しい統治正当性を「神国日本」ではなく、別のところに求めるべきだと思う。といって、排他的な一神教ではないもの。私は「父性の系譜」の項で、

〇 中央政治(外交・防衛・交易)は預治思想による集権化
〇 地方政治(産業・開拓・利害調整)は天道思想による分権化
〇 文化政策(宗教・芸術)は政治とは切り離して自由化

*「預治思想」=「天命を預かり治める」
*「天道思想」=「自然を敬う考え方」

〇 列島の統治思想では天命=天道とする
〇 天道=自然現象=民意
〇 民意を上手く掬い上げるために代議制を導入する
〇 代議制のベースは家(イエ)とする

という近世のあらまほしき統治思想の骨格は、今の時代でも通用するのではないかと書いた。その理由は、天道思想の自然を敬う考え方は、20世紀後半に西洋の合理主義的科学から派生してきた、自然をダイナミックに捉える「非線形科学」をその教義とすることが可能だからだ。「天命=天道=自然=民意」を至高として、「自然を敬う考え方=非線形科学」を教義とする国家統治。4つのプレートがせめぎ合い、自然災害の多い列島に相応しい統治思想ではなかろうか。この件、項を改めてさらに考えを展開してみたい。

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posted by 茂木賛 at 10:50 | Permalink | Comment(0) | 公と私論

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